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75: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:17:21.96 ID:EjVEnkhT.net
朝起きてすぐ、椿に電話をした。
「昨日の公園に来てくれないか、今すぐ」
そう言うと椿は、少し驚いていたが、
「わかりました」
と、了承した。

76: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:17:50.95 ID:EjVEnkhT.net
公園までの道、俺はずっと昨日看板が落ちてきた時のことを考えていた。
よくよく考えれば、あれはおかしいんだ。
あの建物は古くは寂れていたが、看板は比較的新しかった。多分古いビルを利用して、別の店の看板を取り付けたんだろう。
だとすると、老朽化なんてしてるはずがないんだ。

77: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:18:51.35 ID:EjVEnkhT.net
俺がここ数日間ずっと抱いていた疑問、椿はどうして俺と入れ替わろうと思った? 
あんな、充実した人生を送る奴が、なんで俺みたいなやつと入れ替ろうと思ったんだ。
あいつは、飽きたからと言った。本当にそうなのか?違う理由があるんじゃないか?
もう俺の疑念は確信に変わっていた。

78: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:19:16.90 ID:EjVEnkhT.net
公園に着くと、椿は昨日と同じように、ブランコの柵に腰掛けていた。
「それで、どうしたんですか。学校サボっちゃダメですよ。まぁ、三日間、貴方をつけるために学校サボった僕が言えることじゃないですけど」
「ああ、単刀直入に言う。入れ替わりを辞めたい」
俺はできるだけ落ち着いて、余裕を持つよう心がけて話した。

79: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:20:33.74 ID:EjVEnkhT.net
「なるほど、まぁ、そうでしょうね。こんな早くに呼び出すってことは、そういうことでしょう。それで、理由は?」
「理由は二つある。一つは言うつもりはない。もう一つは……」
もう俺の、椿に対する印象は決していいものではなくなっていた。
今、椿にある感情は、むしろ最初に会った頃の、よくわからないものに対する不気味という感情だ。

80: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:21:42.72 ID:EjVEnkhT.net
だから、俺は糾弾するように、努めて冷静に、さっき確信したことを口にした。
「お前、命を狙われてるだろ」
「どういうことですか?」
「昨日、俺が歩いていると上から看板が落ちてきた。あと一歩でも前にいたら、俺はここにいなかっただろうな。最初は老朽化か何かだと思った。でも違う、老朽化するような古い看板じゃなかったんだ」
「それで僕が命を狙われていると? それは少し短絡的すぎませんか」
「そもそもおかしいんだ。お前みたいな幸せな奴が、俺と入れ替わったことが。普通に生きてたら俺になりたいなんて思わないはずだ。飽きた? そんなわけがない。そんなふざけた理由じゃなくて、もっと大きな理由があるはずなんだ。
それでやっと合点がいった。お前は俺と入れ替わって、俺を殺させようとしたんだ。お前の命を狙っているやつに。そして自分は俺として、柊 京介として生きていくつもりだったんだ」

81: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:23:07.55 ID:EjVEnkhT.net
俺は自分の考えを、まくしたてるようにすべて話した。椿はずっと黙ったままなので、俺は続ける。
「これですべて辻褄が合うんだ。今後、俺として生きていくつもりなら、少しでもいい人生にしようともするだろう。どうなんだ?」
俺は自分の推測が正しいのか、椿に返事を求めた。

82: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:24:19.68 ID:EjVEnkhT.net
「…………」
しかし椿は、なお押し黙ったままだ。仕方がないので、また俺が話す。
「なんでお前が命を狙われているのかはわからない。でも、こんなことをしなくても、俺はお前に協力したいと思ってる。
この一週間、お前として過ごしてわかったんだ。お前は、周りのみんなから愛されている。そんなお前が本当に悪いやつなわけがない。なぁ、話してくれ。なんでお前が命を狙われているのか」
多分一週間前まで、いや昨日までの俺なら、椿に協力したいとは思わなかっただろう。
でも昨日七瀬と話したからかな、俺は本当に椿の助けにもなりたいと思っていた。

83: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:24:58.60 ID:EjVEnkhT.net
「ーーククク、フゥーハハハ」
突然、ずっと黙っていた椿が、今までの椿からは想像もつかないような、笑い声を発した。
「お、おいどうしたんだ」
俺は、椿の豹変ぶりに狼狽えながら、聞いた。
「いやいや、これが笑わずにいられますか?だって、まるっきり的外れだ」
椿は笑い声を挟みながらそう言った。
「的外れ?どういうことだ。いったい何が的外れなんだ?」
俺がそう聞くと、
「何って、僕が命を狙われているとか、いやー本当におかしい。本当に貴方は馬鹿ですね」
椿の豹変と、明らかに悪意を込めた言葉に、俺は言葉を発することができなかった。

84: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:25:40.81 ID:EjVEnkhT.net
「そもそも貴方は疑問に思うところを間違っている。貴方が疑問に思わなきゃいけないところは、僕がどうして入れ替わろうと思ったとかじゃない、僕達がどうしてこんなに似ているかだ」
そんなのに理由があるのか? 偶然じゃないのか?俺は答えがわからなくて、そのまま口に出す。
「そんなの、たまたまじゃ」
「そんなわけないでしょう。こんなに似てるんですよ。たまたまで済むわけがない」
椿は間髪入れずに、ぼくの答えを否定した。

85: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:26:42.24 ID:EjVEnkhT.net
「なら、なんで?」
「…………」
また椿が黙り出した。いったいこいつは、何を考えているんだ? どういう意味だ? 俺とこいつが似ている理由、そんなものがあるのか?
「おい、答えろよ」
「…………」
俺が何を言っても、椿は黙ったままだった。
静寂が場を支配する。

86: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:27:45.91 ID:EjVEnkhT.net
静寂を崩したのは、俺でも椿でもなかった。
その人の登場に、俺の心はまたざわついた。
どうしてあいつがここにいるんだ?
「今の話……どういうこと?」
公園の入り口から七瀬が入ってきた。
「な、なんでここにいるんだ」
「学校に行く途中、駅のホームで柊を見かけた。あんたは学校に行くのに電車は使わないはずなのに。
それに最近の柊なんかおかしかったから、なんかちょっと心配で、それでつけてきたら、この公園に入って、そしたら…… ねぇ、どういうことなの、誰なのその人? 入れ替わりって何?」
「それは……」

87: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:28:40.26 ID:EjVEnkhT.net
俺が答えられずにいると、椿が急に話し出した。
「入れ替わってたんですよ、この一週間、そこの人と僕が」
さっきまでの豹変ぶりとうってかわって、その声はいたって冷静だった。
「どういうこと?じゃあ昨日の夜あったのも柊じゃなくて、貴方なの?」
「それは俺だ」
それだけは否定しなくてはならない。
昨日七瀬 千由とあったのは、間違いなく俺だ。
「そっか……」
七瀬の顔はよくわからない表情だった。
「昨日の夜ですか、まぁ、僕にはわかりませんが、大方それが入れ替わりをやめようと言った原因でしょうね。まったく、勝手だ」
椿の声には少し、熱がこもっているように感じた。

88: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:29:45.71 ID:EjVEnkhT.net
「どうして、なんで入れ替わりなんかしたの?」
七瀬が冷静さを欠いた声で、俺に聞いた。
本当は答えたくない。
でも、俺は答えなくてはいけない。
七瀬に嘘はつきたくない。

89: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:30:51.65 ID:EjVEnkhT.net
「嫌だったんだ。変わってしまった自分が。七瀬と昔のように話したいのに、変わってしまった自分を見られるのが怖くて話せない自分が。
そんな時、椿に出会った。椿は、俺に入れ替わりを持ちかけてきた。それで、椿が俺になれば、なんとかしてくれるんじゃないかと思った。
だから入れ替わりを受け入れた。
だけど、多分心のどこかでは、七瀬との問題を椿に任せるのが嫌だったんだろうな。俺は椿に七瀬のことを教えなかった。そんな矛盾をもったまま入れ替わりを続けてたんだ、俺は。
でも昨日七瀬と話して、やっと気づいた。俺は七瀬の力になりたい。そしてそれは、椿になんとかしてもらった柊 京介じゃなくて、俺が、俺自身がなんとかしたいって……」
俺は全部を話した。自分が思っていること、全部を。

90: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:31:19.09 ID:EjVEnkhT.net
「……バカ」
七瀬のその言葉に、棘はなかった。
「そんのことしなくたったって……私は……」
その声はとても優しくて、俺を包み込んでくれるような暖かいものだった。

91: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:31:55.97 ID:EjVEnkhT.net
「あのー、甘い雰囲気出すのやめてもらっていいですか?」
椿の言葉で、俺は現実に戻った。
「そろそろ、話を戻しましょうか。何故、貴方と僕が似ているか」
「ああ、教えろ。偶然じゃないのか?」
「何度も言わせないでくださいよ。本当に馬鹿なんですか?」
「いい加減にしろよ。早く話せ」
もう俺の椿に対する感情は、嫌悪感しかなくなっていた。

92: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:32:32.49 ID:EjVEnkhT.net
「そうですね、まぁ、その前に貴方さっき、僕が命を狙われていると言いましたね」
「あぁ、俺は、だから俺を身代わりにするために、入れ替わりを持ちかけたと思っていた」
「それですね、まず、それ、さっきも言いましたが、完全に的外れ、見当違いもいいところだ。むしろ命を狙われているのは貴方の方ですよ」
「俺? なんで俺が?」
「昨日のその看板、落とした人は僕ではなく、貴方が柊 京介だと認識した上で、貴方を殺そうとした」
「だからどうして?」
この前も言ったが、俺に命を狙われる心当たりなんて一つも……
「それじゃあ話しましょうか。僕と貴方が似ている理由」

93: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:33:06.04 ID:EjVEnkhT.net
こいつは何がしたいんだ?
どんどん疑問を増やされる。
それでも、俺はただ聞くしかないこいつの話を。
そしてそれは七瀬も同じのようだった。
二つの視線が椿に集まる。

94: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:34:06.54 ID:EjVEnkhT.net
「僕は一週目の貴方です」
「は?」
こいつは何を言っているんだ。
どういう意味だ。ふざけてるのか?
「はは、冗談ですよ」
「と言うとでも思いました? 冗談じゃないですよ、何度でも言いましょうか? 僕は一週目の貴方です、柊 京介」

95: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:35:21.08 ID:EjVEnkhT.net
意味がわからない。話が見えてこない。
「最初に会った時も言ったでしょ、僕は貴方ですって。僕、あんまり嘘つかない方なんですよ」
駄目だやっぱりわからない。
何を聞いたらいいかもわからない。
一週目ってなんだ。
俺の頭の中は、疑問符で埋め尽くされていた。
それをおかまいなしに椿は話し始めた。
一週目とやらのことを。

96: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:38:28.25 ID:EjVEnkhT.net
僕は独りだった。
小学生の頃はまだよかった。たまに、友達と遊んだりした記憶もあるし、少しは社交的だったと思う。
けど中学生になってからは全然駄目だった。
人との喋り方がわからなくなっちゃたんだ。

97: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:39:31.96 ID:EjVEnkhT.net
中学生の頃の僕は本当、酷かったと思うよ。学校では毎日、ずっと時計を見て、早く時間が過ぎないかなと思ってた。
学校っていうのはさ、友達がいない人のためにできてないんだ。
友達がいない人はどうやったって、不幸になる仕組みなんだよ。

98: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:39:51.89 ID:EjVEnkhT.net
そしてそれは、高校生になっても一緒だった。
中学の時点で、僕の性格はほぼ固まってしまったからね。人と話すのが苦手になってたんだ。
それが高校生になった途端、急になおるなんてことはありえなかった。
僕はずっと独りだったよ。そう、いつでも。

99: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:40:38.18 ID:EjVEnkhT.net
さぁ、ここで、一人の女の子の話をしておこうかな。その子は僕が小学生の時、転校してきたんだけどさ、一目見た瞬間に、僕はその子のことしか考えられなくなるくらい、彼女に惹かれていた。
一目惚れってああいうことを言うんだろうね。

100: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:41:04.34 ID:EjVEnkhT.net
その子は、いつまでもクラスに馴染めなかった。
彼女は少しは異質だったからね、小学生の僕達はその異質な少女を、受け入れることができなかったんだ。
それは、僕も例外ではなかった。僕は彼女に話しかけることができなかった。何回かチャンスはあったと思う。でも話せなかった。
小学生の仲間意識って怖いんだよ。僕が彼女に話しかけてたら、僕も異質として扱われてただろうね。
僕はそれを恐れた。彼女と話して、自分も異質になる勇気がなかったんだ。

101: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:42:26.95 ID:EjVEnkhT.net
そのまま僕は彼女と一度も話せないまま、僕は小学校を卒業した。
中学校も別々だったから、それから彼女に会うこともなかった。

102: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:42:48.60 ID:EjVEnkhT.net
そろそろ話を戻そうか。
えーと、そう高校の話だ。
高校生の僕は相変わらず独りだった。
それで、その高校で僕は運命の再会を果たしたんだ。

103: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:43:25.82 ID:EjVEnkhT.net
入学式でその子に再会したんだ。そして驚くことに、彼女は僕のことを覚えててくれたんだ。
それからはたまに彼女に会うと、少し話をするようになった。
クラスは違かったから、あんまり会う機会はなかったけどね。
でも、僕にはそれだけで十分だった。クラスでは相変わらず独りだったけど、たまに彼女と話せるのが本当に楽しかったんだ。

104: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:44:55.63 ID:EjVEnkhT.net
それなのに僕は、やってはいけないことをやってしまったんだ。
彼女と再会してから一ヶ月たったころかな、下校中同じ制服を着た奴が他校の生徒に絡まれてるなと思ったら、その子だった。
かっこいいヒーローだったら、ここで彼女の手を引いて駆け出すんだろうね、きっと。

105: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:46:01.68 ID:EjVEnkhT.net
でも、僕はヒーロにはなれなかった。逃げたんだ、僕は。走って、独りで逃げた。去り際彼女と目があったんだ。その目はすごく悲しそうだった。

106: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:46:21.04 ID:EjVEnkhT.net
次の日から僕は学校に行かなくなった。
ずっと部屋に引きこもってたんだ。
それで、一ヶ月くらい過ぎたころかな、なんかもう全部がどうでもよくなっちゃってさ、僕は久しぶりに学校に行った。
親は喜んでたよ、笑っちゃうよね、僕が何のために学校に行くかも知らないでさ。

109: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:48:34.92 ID:EjVEnkhT.net
学校に着いたら僕はすぐ屋上に行った。なんかさ、決着をつけるならここだ、って思ったんだよね。
ずっと僕を苦しめてきた空間。ここしかないなって思ったんだ。
人生に決着をつけるならさ。
僕は屋上から飛び降りた。
そして死んだ……

110: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:49:51.57 ID:EjVEnkhT.net
はずだった。
気付いたら僕は体が縮んでーー
いや、ごめん冗談だよ。うん、でもあながち冗談でもないんだ。
気付いたら赤ちゃんになってた

111: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:50:16.48 ID:EjVEnkhT.net
本当に驚いたよ、だって赤ちゃんだよ、さっきまで高校生だったのに。
それで親なんだけどさ、変わってたんだ。高校生の時の僕の親じゃなかった。
それに、その後知ることになるんだけど、僕の名前も変わってた。いったい何が起こったのかと思ったよ。
夢かとも思った。でも夢じゃなかった。
いや、もしかしたら夢かもしれないよ。だけどもうこれだけ時間が経ってるんだ、たとえ夢だとしても僕にとってはこれが現実だ。

112: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:50:42.00 ID:EjVEnkhT.net
まぁ、いいや。それで、最初は驚いたんだけどさ、段々、これはチャンスだと思うようになったんだ。
一から人生をやり直すね。
ほら、よくあるだろ、子供のころに戻って人生をやり直すとかさ。
まぁ、僕の場合は全くの別人になったわけだけど。

113: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:50:59.77 ID:EjVEnkhT.net
とにかく僕は人生をやり直すことにした。それは苦痛を伴うものでもあったけどね、考えても見てよ、高校生が幼稚園とかにかようんだよ。
あんまり突出した天才になるわけにもいかないからね、周りより少しできる程度に抑えなくちゃいけなかった。

114: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:51:52.05 ID:EjVEnkhT.net
でも、中学生くらいになるとわりと楽しかったよ。一週目とは違う、とても楽しい学校生活だったからね。
それに一週目の記憶のおかげで、周りよりも優位に立てた。
勉強とかは忘れてしまったものも多かったけど、それでも周りよりはハンデがあった。
加えて、僕は真剣に生きたんだ。前の記憶があるからってそれに胡座をかいたりせず、真面目に授業も受けたし、真面目にみんなに馴染もうとした。

115: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:52:13.22 ID:EjVEnkhT.net
そのおかげで僕は、一週目とは似ても似つかない、絵に描いたような人気者になれた。
まぁ、成長していくうちにわかったことだけど、顔は一週目と同じだったんだけどね。
なんでだろうね、名前も親も住んでる場所も全く違う別人になったのにさ、顔だけは一緒だった。
まぁ、別にそれで困ることもなかったけどね。上京して、高校に入ってからも、それは変わらなかった。

117: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:53:25.85 ID:EjVEnkhT.net
そんな感じで楽しく生きてたんだけどさ、一つだけ嫌なことがあった。
たまになんだけどさ、一週目の夢を見るんだ。
あの時、絡まれてる彼女を見捨てた時の夢を。
僕がヒーローになれなかった時の夢を。
あの時の彼女の悲しそうな顔が、脳裏に焼き付いて離れないんだ。
でも、それを除けば本当に楽しく生きてたよ、あの日までは。

118: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:54:33.97 ID:EjVEnkhT.net
高校に入って半月くらいしたころかな、僕をみたんだ。
正確には僕と同じ顔をした何か。
本当に驚いたよ。やっぱりこの世界は夢なのかなとも思った。
でも、とりあえずこの世界で生きている以上、夢とか夢じゃないとかはどうでもよかった。
それで、そいつを尾行してみた。そしたらまた驚くことにさ、そいつはおぼろげながら残っている、僕の記憶の中の、僕が一週目に住んでいたであろう家に、入っていった

119: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:55:00.62 ID:EjVEnkhT.net
次の日もそいつの家の近くで待ち伏せして、つけてみた。
そしてら、今度ははっきり覚えている、一週目、僕が通っていた学校にそいつは通っていた。
あの忌まわしき空間に。
でもさ、正直もうどうでもよかったんだ、一週目の僕のことなんて。僕は今、楽しく暮らしている。それだけ十分だった。だから、特にそれから何かをしようという気にはならなかった。
あれを目撃するまでは。

120: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:56:12.67 ID:EjVEnkhT.net
あの日はたまたま、一週目で僕が住んでいた場所の近くに来ていた。
友人と遊ぶ約束だったんだけどさ、そいつが来られなくなっちゃって、仕方ないから帰ろうと駅に向かってたんだ。
そしたらまた会った。でも今度は運命の再会なんかじゃなかった。呪いの、悪夢の再会。そこに彼女はいた。一週目と同じように、他校の生徒、いや、今回は他校じゃなかった、僕が今通っている学校の生徒に絡まれて、そこにいた。
七瀬 千由はそこにいた。

121: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:56:32.60 ID:EjVEnkhT.net
僕を、人生をやり直した僕を、運命は許さなかった。
僕はどうすればよかったんだろうか?ただ、その時の僕は頭が真っ白になって、何もできずに物陰から、それを見ていた。

122: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:57:40.24 ID:EjVEnkhT.net
それは、一瞬の出来事だった。
本当に一瞬。
気付いたら、いつの間にかあらわれた、僕のドッペルゲンガーが、七瀬の手を掴んで、走り去って、いなくなっていた。
あいつが、まるでヒーローみたいに七瀬を助けた。
柊 京介が七瀬 千由を助けた。
僕は、椿 圭介はただそれを物陰からただ見ていた。

123: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:58:17.95 ID:EjVEnkhT.net
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
一体どういうことだ。
僕が、柊 京介が七瀬を助けた。なんで。
僕は一週目七瀬を見捨てた。なんで。
僕が知っている一週目とは別のことが起きている。なんで。
柊 京介がヒーローになっている。なんで。

124: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:59:24.98 ID:EjVEnkhT.net
どうして、どうして僕じゃないんだって何度も思った。なんで七瀬を助けたのが僕じゃないんだって。どうして、
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで。

125: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 21:59:51.48 ID:EjVEnkhT.net
その日、僕はある計画を思いついた。
それを実行するために、その日からたまに、学校を休んで、ドッペルゲンガーを尾行した。
そして念密に入念に計画を練って行った。
七瀬を助けたのがあいつなんて認めない。
あいつが、柊 京介だなんて認めない。
絶対に認めない。

126: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:00:48.62 ID:EjVEnkhT.net
そして一ヶ月後、僕はドッペルゲンガーに話しかけた。僕が、柊 京介になるために。

127: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:01:48.59 ID:EjVEnkhT.net
「これが僕の人生です。どうですか?面白かったですか?」
俺はしばらく声を出せなかった。
何を言っていいのかわからなかった。

128: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:02:39.60 ID:EjVEnkhT.net
「嘘だ」
やっと出た言葉は、とても小さい声で、聞こえるか、聞こえないかくらいのものだった。
「嘘じゃないですよ。逆に他に何か思いつくんですか、僕達が似ている理由」
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ」
「ちょっと、落ち着いて、柊」
そういった七瀬の声も震えていた。

129: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:03:01.10 ID:EjVEnkhT.net
「落ち着けるわけないだろ。こんなの、嘘だ……」
つい声を上げる。
「何回も言わせないでくださいよ。これは真実です。さっき言ったでしょ、僕はあんまり嘘をつかないって」
「こんなの、嘘だろ。なんで、じゃあ俺が生きてきた、十五年はなんだったんだ。お前の模倣なのか。お前が、生きてきた道をただ、たどってきただけなのか」
それは、あまりにも残酷なことだった。

130: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:03:35.44 ID:EjVEnkhT.net
「そうなんじゃないですか。所詮あなたはコピーなんですよ、僕の。貴方初めて会った時言いましたよね、お前はドッペルゲンガーなのか?って。
その時僕言いましたよね、違います、と。繰り返し言いますけど、僕は嘘をあまりつかない。僕がドッペルゲンガーなんじゃない、貴方がドッペルゲンガーなんですよ、僕の。
だから僕は生き残るために貴方を消さなくてはいけない。自分を証明するために」
「じゃあ、まさかあの看板は」
「そうですよ、僕が落としました。貴方を殺すために」
「なっ……」
「まぁ、失敗しましたけどね。貴方も運がいいですよね。まさかあんな寂れた所に、人が通りかかるとは。あっ、知ってますか? 自分の顔をしたやつを殺そうとするのって、結構神経すり減るんですよ」

131: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:03:56.03 ID:EjVEnkhT.net
「どうして……どうしてそんな……」
「どうしてって、許せないからですよ、貴方が柊 京介でいることが、その席に座るべきなのは僕だ」
「そうか……もういいよ……疲れた。勝手にすればいい。どうせ俺はコピーなんだろ。ドッペルゲンガーなんだろ。確かに、消えるべきは俺だ」
もう俺はなにも考えたくなかった。俺の十五年は。全部決められたコピーだったんだ。そこに俺の意思はなかった。俺に存在する意味はなかったんだ。

132: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:04:22.38 ID:EjVEnkhT.net
「そうですか、よかった、思ったより物分かりいいですね。その通り、貴方はコピーなん……」
「そんなことない!」
椿の言葉を遮ったのは七瀬だった。
「あんたは、柊はコピーなんかじゃない。だった、あんたは私を助けてくれた、何回も、何回も。ねぇ、覚えてる? 私の名前。あんたが意味をもたせてくれた、私の名前」
名前……クリスティーナ……

133: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:04:41.31 ID:EjVEnkhT.net
七瀬クリスティーナ千由。
これが私の名前。アメリカで生まれた私には、クリスティーナというミドルネームがあった。
両親はどっちも日本人だったけど、アメリカで暮らすのに不自由がないようにと、つけられた名前だった。

134: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:05:38.05 ID:EjVEnkhT.net
アメリカではみんな、クリスと私を呼んだ。
この名前は別に嫌いじゃなかった。でも、日本に来てこの名前は枷になった。
日本の学校に転校して、その時も私は、このクリスティーナという名前を特に隠すことはしなかった。
でも、この名前は日本では普通ではないらしく、私はからかわれた。変なの、と。
それから私はこの名前が嫌いになった。

135: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:06:02.68 ID:EjVEnkhT.net
その後も、私は学校に馴染めなかった。
それも当然か、名前をからかわれた日から、私はずっとむすっとした顔で、誰とも話さなかった。誰に話しかけられても、先生も、学級委員の子も、私にしつこく話しかけてくる男の子にも。
本当に可愛くない子供だったと思う。

136: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:06:56.73 ID:EjVEnkhT.net
ある日、また名前をからかわれることがあった。
確か相手は隣のクラスの子達で、アメリカからきた珍しい私を見に来たとかだった気がする。
それで、その子達に、変な名前と言われた。
私は多分、泣きそうな顔をしてたと思う。
でも、それを必死に隠すように、むすっとした顔をしていたんだろう。
あと少しで本当に泣いてたかもしれない。
でも、私が泣くことはなかった。私が泣く前に、私のヒーローが私を助けてくれた。

137: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:07:20.10 ID:EjVEnkhT.net
「変じゃないよ。かっこいいじゃん。クリスティーナ」
彼はそう言った。私にしつこく話しかけ続けてた男の子、柊 京介。
ずっと無視してたのに、それなのに彼は私を助けてくれた。
私の名前をかっこいいと言ってくれた。
この日自分のクリスティーナという名前を、私は大好きになった。
そしてその日から彼が私のヒーローになった。

138: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:07:55.34 ID:EjVEnkhT.net
「ねぇ、覚えてるでしょ、私の名前。クリスティーナ。あの日、私はあんたのおかげで、この名前をまた好きになることができた。それは、あんただからできたこと、あんたにしかできなかったこと。だからあんたは、絶対にコピーなんかじゃない」
「七瀬……」
忘れるわけがない。
俺と七瀬をつなげてくれた名前。

139: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:08:18.25 ID:EjVEnkhT.net
「いやー面白いですね。クリスティーナ、そんな名前でしたね。僕も呼びますよ、クリスティーナ」
椿が笑いながら言った。
「違う、貴方じゃない。この名前を好きにさせてくれたのは、貴方じゃない。好きにさせてくれたのは柊 京介よ」
「だから、言ってるでしょ。僕も柊 京介だったんですよ。いや、僕が柊 京介なんだ。そいつはただのコピーだ」
「違う、コピーなんかじゃない。私にとっての柊 京介は貴方じゃない」

140: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:09:00.92 ID:EjVEnkhT.net
「そうですか、わかりました。じゃあ、ゲームをしましょうか」
「ゲームだと、この状況でお前はふざけてるのか」
何を言っているんだこいつは、わけがわからなくて、つい聞き返してしまった。
「いえ、真剣ですよ。ふざけるわけがないでしょう。僕は今、ムカついているんですよ。僕の席にお前が座っていることが。許せない。だからゲームをするんだよ。僕かお前か、どっちが柊 京介かを決めるゲームを」
その声は俺が聞いてきた中で一番真剣で、一番怒りがこもった声だった。

141: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:10:02.69 ID:EjVEnkhT.net
「ちょうどいいことに、今、僕と貴方の格好は一緒です。制服のワイシャツもズボンも僕達のは完全に同じだ。だから七瀬さんに決めてもらいましょう。どっちが柊 京介か」
「どうやって?」
椿が何をしたいのかがわからなかった。

142: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:10:46.40 ID:EjVEnkhT.net
「簡単なことですよ。今から五回連続、七瀬さんにはどっちが貴方かを当ててもらいます。もちろん一言も喋らずに、見た目だけで。できますよね、こいつが柊 京介だと言うのなら」
そんなのできるわけがない。俺達の見た目は完全に一緒だ。それを見分けるなんて不可能だ。
「いいよ」
七瀬は涼しそうにそう言った。

143: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:11:05.75 ID:EjVEnkhT.net
「なっ……」
「じゃあ始めましょうか」
「待て! できるわけがないだろう、そんなこと。無理に決まってる」
「柊、信じて私を。私はわかる、絶対に」
七瀬は俺の目を真っ直ぐ見て、そう言った。
そんな目で見られたら、言い返すことはできない。

144: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:11:33.45 ID:EjVEnkhT.net
でも……それでも七瀬にそんなことをさせたくはなかった。だから俺は止めるように声を出した。
「でも……」
「大丈夫だから、ね」
七瀬にそんな顔をされたら、了承するしかなかった。
「わかった」
「決まりですね、じゃあ、少し後ろを向いていてください」
そう言われて、七瀬は後ろを向いた。

145: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:11:56.72 ID:EjVEnkhT.net
「じゃあ始めましょうか」
俺達は横並びになった。どっからどう見ても、同じ人間が二人いるようにしか見えないだろう。これを見分けるなんて……
「右」
七瀬は振り向いてすぐにそう言った。正解だった。

146: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:12:21.14 ID:EjVEnkhT.net
「当たりですね。まぁ、一回目ですからね。じゃあ、もう一度後ろを向いてください」
椿は飄々とした顔でそう言った。
そうだ、まだ一回目だ。でも今ので俺の心はもう決まっていた。七瀬が俺に信じてと言ったんだ。それなら俺はただ七瀬を信じるだけだ。たとえ結果がどうなろうと。

147: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:12:45.68 ID:EjVEnkhT.net
「じゃあ二回目、どうぞ」
「右」
また即答だった。正解だ。
「当たりです。偶然ってすごいですね。それでは、また後ろを向いてください」
椿の顔にはまだ余裕が感じられた。

148: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:13:36.49 ID:EjVEnkhT.net
「三回目、どうぞ」
「左」
「なっ……」
椿の顔に焦りが見え始めていた。
「その反応ってことは、正解みたいね。じゃあ次やりましょう」
七瀬はいつも通りの表情で余裕を持っていた。
「くっ……」
反面、椿にはもう余裕はなさそうだった。

149: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:14:00.73 ID:EjVEnkhT.net
「四回目、どうぞ」
「右」
また正解だ。七瀬は本当に俺がどっちだかわかるのか?どうして?
「…………」
椿はもう何も言えないようだった。
「正解みたいね。じゃあ最後やりましょうか」
そう言って七瀬は後ろを向いた。

150: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:15:07.28 ID:EjVEnkhT.net
「五回目、どうぞ」
椿の声は震えていた。
七瀬は振り向くと、少しの間、黙って動かなかった。やっぱり、わからないのだろうか。
俺がそんな風に思っていると、七瀬は前に進んできた。

151: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:15:36.74 ID:EjVEnkhT.net
そして、俺達の目の前までくると、少し止まって、そのあと、俺にキスをした。

152: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:16:31.12 ID:EjVEnkhT.net
時間が止まっているようだった。一秒が無限に感じられた。

154: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:16:49.54 ID:EjVEnkhT.net
「なっ、どうして、なんでわかった」
椿が焦りを隠さない声で、叫んでいるのが聞こえた。
「私の勝ちみたいね。だから言ったでしょわかるって」
七瀬は俺から離れると、まるで当然の結果のようにそう言った。

155: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:17:25.64 ID:EjVEnkhT.net
「なんで、わかるはずがない、どっからどう見ても一緒のはずだ」
椿が叫ぶ。
「違う、一緒じゃない。この世に柊 京介は一人しかいない。わからないわけがない。ちょっと顔が似ているくらいで、わからなくなるわけないでしょ。優しくていつも私を助けてくれる、私が大好きな柊 京介はあんたよ」
俺の方を見て、七瀬はしっかりとした声で言った。

156: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:18:47.50 ID:EjVEnkhT.net
「七瀬……」
「ねぇ、柊、あんたはコピーなんかじゃない。私の名前を大切なものにしてくれたのも、私の手を引いてくれたのも、全部あんた。この世で一人だけの、あんたなの。私が大好きなのはあんたなの。
それでもまだ不安なら、私が証明する、どこにいても何をしていても、あんたはあんただって、私が証明する。あんたの存在を私が証明し続ける。これでもまだ不満?」

157: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:20:04.46 ID:EjVEnkhT.net
七瀬がここまで言ってくれたんだ、不満なわけがなかった。十分すぎるくらいだ。
「いや、ありがとう……七瀬」
そうだ俺はここにいる。ここにいる俺の、七瀬が好きという気持ちは、俺だけのものだ。七瀬が証明してくれたことを、誰にも否定なんかさせない。

158: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:20:28.79 ID:EjVEnkhT.net
「そんな……どうして……」
椿が枯れたような小さい声で呟いた
「どうして、どうして僕じゃないんだ。なんでお前なんだ。何が違うんだよ。お前と僕の。どうして……」
そう叫んだ椿の体が、徐々に透明になっていた。

159: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:21:22.72 ID:EjVEnkhT.net
「お、おいどうしたんだ、その体」
俺が聞くと、
「なるほど、僕は消えるわけか」
途端、椿は急に落ち着いた声になった。
「消えるって、どういうことだよ」
「さぁ、でもどう見てもそうでしょ、僕は消えるんですよ。まぁ、ドッペルゲンガーに会っちゃいましたからね、この世に同じ人間は二人いらないんじゃないですか。
それに、実は今日は一週目の僕が自殺した日なんですよ。だから僕は今日までに、貴方を殺して柊京介にならなくてはいけなかった。しかし僕は失敗し、貴方が柊京介だと証明されてしまった。だから消えちゃうんですよ、きっと」

160: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:21:43.03 ID:EjVEnkhT.net
「何か方法はないのか、何かあるだろ、助かる方法が」
「ないんじゃないですか。あったとしてまわかりませんし」
「そんな……」
「それに、なんで貴方がそんな焦るんですか。別にいいでしょ僕が消えたって。そもそも僕は貴方を殺そうとしてたんですよ」
椿がどんな人間だとしても、俺を殺そうとしてたとしても、この一週間椿として過ごした俺は、椿が消えるのを受け入れられなかった。

161: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:22:32.96 ID:EjVEnkhT.net
「それでも、この一週間お前を見てきて、お前として過ごして来た俺には、やっぱりお前が悪い人間には思えない」
「なんですかそれ。やっぱ、僕達似てないですね。僕はそんなお人好しじゃないですから。まぁ、そんな貴方だからヒーローになれるんでしょうね」
椿の体はどんどん薄くなっていた。

163: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:24:53.07 ID:EjVEnkhT.net
「おい、待てよ。まだ何か方法が」
「もういいですよ。僕には柊 京介でいる資格はないみたいですね。そもそも僕は本当だったら、一週目の時点で死んでいる人間ですから、当たり前かもしれませんね。僕は一度、柊 京介を諦めたんですから」
「そんな……」
「それじゃあ、いろいろすみませんでした。頑張ってくださいね、これからいろいろ……柊 京介さん」

164: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:26:03.40 ID:EjVEnkhT.net
そう言った椿の体はもうほとんど消えていた。
俺はなぜかこの顔を、俺と同じ顔をしたやつが消えていく姿を、忘れちゃいけないと思った。
絶対に。

165: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:27:34.08 ID:EjVEnkhT.net
気づくと椿はもういなかった、
「消えちゃったの?」
七瀬の声はとても小さかった。
「みたいだな……」
多分俺の声もそんな感じなんだろう。
「そっか……悲しいね」
「そうだな……」
「行こっか」
そう言うと七瀬は俺の手をひいて、公園の出口へと向かった。

166: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:28:09.37 ID:EjVEnkhT.net
後日調べてみると、椿 圭介という存在は、最初からいなかったことになっており、覚えているのは俺と七瀬だけだった。

167: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:28:58.30 ID:EjVEnkhT.net
椿が消えてから三日後、俺と七瀬はあの公園に来ていた

168: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:29:18.15 ID:EjVEnkhT.net
「ねぇ、柊」
「何?」
「その……この前ケンカしたって言ったじゃん、親と」
「ああ、そうだったな」
「その理由なんだけどさ、私、またアメリカに行かなきゃいけなくなったの。親がアメリカに戻るんだって」
そんな理由だったのか。また七瀬と離れなくちゃいけないのか。

169: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:30:39.79 ID:EjVEnkhT.net
「そっか……」
「そっかって悲しくないの?私いなくなっちゃうんだよ?」
「悲しくないわけないだろ。俺だってできるなら行かないでほしいさ」
やっと、七瀬と一緒に居られるようになったんだ。また離れるなんて嫌だった。
「だったらさ……」
七瀬の声が急に小さくなる。
「どうした?」
「だったらさ、助けてよ。私を止めて。アメリカに行かなくていいようにして。……いいかな? 私のヒーロー」

170: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:31:02.46 ID:EjVEnkhT.net
「ハハハ……フゥーハハハ」
あの時の椿みたいな笑い声が、俺の口から出ていた。
「何、急にどうしたの?」
七瀬はその笑い声に面食らったみたいだ。狼狽えている。
「わかった」
「えっ」
「わかったよ。俺が止める。アメリカになんか行くな。俺と一緒に居てくれ」
とても無責任な言葉だ。でも七瀬が望むなら、俺は無責任でもそうしたかった。いや、どんな無責任な発言にも、責任を持ちたかった。
「うん、ありがと」
七瀬の返事は単純で、真っ直ぐで、俺はそれがただただ嬉しかった。

171: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:32:03.36 ID:EjVEnkhT.net
まだまだ問題は山積みだ。俺の学校生活は結局暗いままだし、七瀬のアメリカ行きを止める方法もわからない。それでも七瀬が隣にいてくれるなら、俺の存在を証明してくれるなら、それだけいい。それさえあれば、俺が自分の存在を不安に思うことはない。

172: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:32:26.24 ID:EjVEnkhT.net
「ねぇ、じゃあ名前で呼んでよ」
「名前? クリスティーナか?」
「違うそっちじゃない」
俺の未来は希望に満ちている。こっから先は誰にもわからない、椿も経験していない新しい未来だ。その第一歩に、俺は一番大切な人の名前を呼んだ。
「行くか、千由」
「うん、京介」

173: 名も無き被検体774号+@\(^o^)/ 2016/02/27(土) 22:36:02.07 ID:EjVEnkhT.net
これでおしまいです
もし最後まで読んでくれた方が一人でもいたならありがとうございました

携帯の電池が切れそうだったので連投してしまい、ずっと一人話してるみたいになってしまってすみませんでした

あとツイッター始めたのでフォローしてくれると嬉しいです
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